とっておき!!TOKYO

東京のおいしい店、いい店、安い店。ここは私の“とっておき!!”と、日々の些細な物事に感じたことをご紹介する場所です。

【ねごと。】 尾道三部作一挙上映。

   

夢のような組み合わせです。

故郷の広島県尾道市を舞台に、大林宣彦監督が1980年代に製作した
「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」のいわゆる「尾道三部作」。

これが現在、高田馬場の名画座・早稲田松竹で一挙上映されています。

 

 

この早稲田松竹、私が学生の時代からずっとある名画座。

一時閉館し、早稲田の学生の運動によって復活した映画館として
知られていますが、実際は単に要員の不足で閉館しただけであって
当初から再開は予定されていたとのこと。

数年前に大改装し、椅子もゆったりしたものになりました。
カップホルダーがついているなんて、隔世の感です。

で、今回の「尾道三部作」。

NHKの朝ドラ「てっぱん」が尾道を舞台に始まることに引っかけて
なのでしょうか、それとも先日ここで上映したアニメ「時をかける少女」
からの流れなのでしょうか、とにかく夢のような一挙上映です。

ただ、尾美としのりの顔を6時間見続けるのはちょっと辛いですが…。

たまたま平日に休みが取れたので私も観に行ってみました。

なんと10時20分上映開始のスケジュールなのに
10時前には館外に10名以上の行列。

並んでいる人々を見ると、頭が薄かったり腹が出ていたりと
かなりオヤジ率が高く、どうも普段の客層とは違います。
(私もそのひとりですが)

平日というのに、上映直前にはほぼ3分の1が埋まっていましたから、
やはり尾道三部作はファンが多い。恐るべしです。

しかし、時を経て観る映画は、かなり印象が違って見えるもの。

同時に、
“ああ、頭の片隅に残っていたあのカットはこの映画のものだったのか”
といった再発見の場でもあります。

「さびしんぼう」。

富田靖子が「アイコ十六歳」という駄作でデビューしたときからの
ファンとして、公開当時は彼女のファンとしてが半分、大林映画ファン
としてが半分の興味で観に行きました。

その後も、バイト代で買ったベータ方式のビデオデッキで繰り返し繰り返し
観た映画です。私の頭のなかの映像は「アマデウス」と「さびしんぼう」と
「愛と哀しみのボレロ」、そしてMTVで流れていたプロモーションビデオで
できているといっても過言ではありません。

その「さびしんぼう」。歳月を経てもう一回観てみると、
富田靖子はかなり演技がうまいことをあらためて知らされました。

実は、この映画のロケの時に私は尾道を訪ねています。

「転校生」「時をかける少女」のなかの尾道の風景に興味を持ち、
年末、福岡への帰省の途中、尾道で下車しました。
たしか寝台列車だったと思います。

しかし現在のようにネットで情報を得られるわけではなく、下調べも
しないまま降り立った尾道の街。観光案内所で手に入れた一枚の
紙切れを手にぶらぶらと歩いただけでした。

当時、山の上の公園の一角にあったユースホステルに泊まったのですが、
客は私ひとりだけ。冷めたごはんを出され、黙々と食べたあと、
ペアレント(ユースホステルの管理人)がひとこと。

「いま、映画のロケが来てるみたいだよ。」

ところが私も疲れていてあまり興味を示さなかったのでしょう。
彼からはそれ以上の情報提供もなく、まさかその映画が大林監督の
「さびしんぼう」であり、しかも富田靖子が主演だと知らないまま、翌日
雪化粧をした尾道をあとにしてさっさと福岡へ帰ってしまったのです。

いま考えてもかえすがえす残念とはまさにこのこと。

もしこのとき、映画のロケを見ていたら、私は映画への道に進んだかも
しれませんし、もしかしたら富田靖子とも仲良くなって…それはないか。

とにかく、銀幕の中では永遠に可愛いままの富田靖子の演技のうまさを
再認識しました。

オーバーホールしたまま眠っているベータのビデオを、久しぶりに
引っ張り出してみようかな、と思わせてくれる映画でした。

「転校生」。

これを観てあらためて感じたのは、小林聡美の天才ぶりでしょうか。

寺の石段を転げ落ちたふたりの中学生の、心と体が入れ替わる
というストーリーで、男を演じる小林聡美と女を演じる尾美としのりの
演技がまさに見どころ。
とくに、小林は全身男になりきっています。

自転車で全力疾走してきた小林が、国道をUターンして山陽本線の
跨線橋へのスロープを一気に自転車で駆け上がっていく姿は圧巻。
リハーサル含めて何本も駆け上がったでしょうから、その脚力には
恐れ入ります。

ただ、尾美の女っぷりも、小林の男っぷりも、公開当初は同じくらい
異様に見えたはずなのですが、現在の眼で観てみると小林の男っぷりに
さほど違和感を感じなくなっている自分に気づきます。

つまり、映画公開から30年近くの歳月のあいだに、日本女性のいわゆる
“女らしさ”がかなりの部分失われてしまった、ということなのでしょう。

ほかにも、映画のなかに出てくるお茶碗の大きさに、コメを食べなくなって
いった日本の食生活の変化を感じますし、時の流れというものを随所に
感じることができました。

あと、「さびしんぼう」も含め大林映画は、各所に笑いを散りばめてあって
なかなか楽しいのですが、スラップスティックなドタバタ劇がちょっと
“ここで終わればいいのに”というポイントから行き過ぎてしまう部分が
あるのが気になります。感覚における時代の差なのかもしれませんが。

残念ながら、時間と根性の都合から「時をかける少女」まで観ることが
できませんでした。

もし観てたら、間違いなく尾美としのり主演の悪夢を見たことでしょう。

しかし、10月1日までの上映期間中にまた行ってみたいと思います。

みなさんもぜひ。

 

 

 

 

 

この文章は「とっておき!!のねごと。」からのものです。
http://www.totteoki.jp/negoto/

 - ねごと。